宗教国家アメリカの今

1 カトリック教会 プロテスタント教会

 

カトリック教会は、ローマ教皇を中心として全世界に12億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派。
その中心をローマの司教座におくことからローマ教会、ローマ・カトリック教会とも呼ばれる。

カトリック教会自身による定義は、教会憲章(Lumen Gentium ) にみられる「ペトロの後継者(ローマ教皇)と使徒
の後継者たち(
司教)によって治められる唯一、聖、カトリック、使徒的な教会」という表現にもっともよく表されている。

カトリック教会の教説(教え)は「聖書聖伝」という言葉であらわされるように、約聖書新約聖書およびイエス・キリスト
使徒の教えに由来し、教父たちによって研鑽され、多くの議論を経て公会議などによって確立されてきたものである。

カトリック教会の信仰生活の中心にあるのは、聖体祭儀のミサである。ミサの中で信者は聖体の秘跡を受ける(聖体拝領)。
主日と守るべき祝日にミサにあずかることは、信徒としてのつとめであるとされている。

西洋地域で勢力を伸ばしたローマ・カトリック教会ですが、教会が権力をもつことによって腐敗していきます。
16世紀になると、教会を批判する人がでてきました。当時の教会では、免罪符(贖罪状)というものが
発行されており、これを買うと罪が許されるというものでした。

免罪符は売れば売るほど教会がお金を得ることができるため、教会は必死に売ろうとしました。

そのため、ルターという人が免罪符を必死に売る行為に対し、教会に疑問を投げかけました。そして、腐敗した教会よりも
キリスト教の聖典である聖書にある言葉に忠実に生きた方がよいのではないか、という考えが生まれます。

これがプロテスタントです。ローマ・カトリック教会に抗議(protest:プロテスト)したことからプロテスタントと呼ばれます。

そのため、伝統や儀式を重視するカトリックの教会は豪華なものが多いですが、プロテスタントの教会は質素なものが多いのです。

カトリックとプロテスタントとの大きな違いとは、人の救いは、イエス・キリストの十字架の死を、自分の罪の
身代わりであった事を信じ受け入れることによってのみ、あるということです。


ローマ法王とか、カトリック教会とか、礼典でもマリアでもないです。信仰のみが救いに必要なものなのです。

アメリカはプロテスタントの国です。宗教的弾圧を逃れて欧州大陸から宗教的自由を求めてピューリタンが
アメリカ大陸にやってきました。人口の圧倒的多数はプロテスタントが占めています。しかし、そうした宗教の
情勢に大きな変化が起っています。

主流派プロテスタントは長期的な低落傾向にあり、非主流派のエバンジェリカル(福音派)の勢力が伸び、
同時にカトリック教徒もその数を増やしています。
アメリカの宗教に何が起っているのか。
アメリカの政治を理解するには、宗教を知らねばなりません。

16世紀、イギリスのエリザベス1世イングランド国教会を確立したが、17世紀にかけて、教会の改革を主張する
清教徒が勢力を持つようになり、特に国教会からの分離を求めるグループは
分離派と呼ばれ、弾圧を受けていた。

この為、信仰の自由を求めた清教徒を含む102人がメイフラワー号に乗ってアメリに渡った。メイフラワー号
船上での「メイフラワー誓約」は社会契約説に基づくものとして知られる。1620に北アメリカ大陸に到着した
ピルグリムファーザーズは、キリスト教徒にとって理想的な社会を建設することをめざした。

彼らの上陸地は、1614にジョン・スミスが発表した地図で「ニュー・プリマス」と名付けられた地域だった。
入植当初の状況は厳しく、半年で半数程が病死したが、先住民インディアンワンパノアグ族
食糧や物資を援助したおかげで冬を越えることが出来た。ニュー・プリマスはやがて、発展する
ニュー・イングランドの最初の植民地となった。

アメリカは宗教国家である。



















人口の78.4%がキリスト教徒であると答えている。宗派はプロテスタントであると答えたのは51.3%と過半数を
超えている。アメリカはピルグリム・ファーザーが宗教的弾圧を逃れてヨーロッパからアメリカにやってきて以来
一貫してプロテスタントの国なのである。

 キリスト教の他の宗派では、カトリック教が23.9%、モルモン教が1.7%を占めている。キリスト教以外では、
ユダヤ教の1.7%、仏教の0.7%、イスラム教の0.6%と続く。また無神論を含め無宗派と答えた比率は16.1%であった。

プロテスタントの宗派的な内訳を見ると、伝統的な主流派プロテスタントの信者の数は現在では
全体の18%を占めるに過ぎず、これに対してエバンジェリカルと呼ばれる原理主義的な
プロテスタントの信者の数が26.3%を占め、主流派プロテスタントを圧倒するまでになっている

主流派プロテスタントの衰退は、信者の高齢化に端的に表れている。2008年に行われた
バイロー宗教調査では主流派プロテスタント教会の信者の28%が65歳以上であった。
31歳から44歳の信者は17%に過ぎなかった。

進化論を巡る論争で主流派プロテスタントと袂を分かち、郊外に出て行ったエバンジェリカル教会は、郊外に住む富裕層を
中心に勢力を拡大してきた。

もはやエバンジェリカルの政治的、文化的な影響力は無視できないまでに大きくなっている。なお、オバマ大統領が所属していた
黒人教会6.9%と比率は低いが、非常に大きな力を持っている。

 アメリカの宗教地図のもうひとつの注目点は、国民の約25%がカトリック教徒であることだ。比率は1978年の29%をピークに
増減を繰り返しているが、信者の数は着実に増加している

国勢調査によると、1990年のカトリック教徒の数は4600万人であったが、2008年には5700万人に増えている。

カトリック教徒の増加要因はラテンアメリカからの移民の増加である。カトリック教徒の46%が
外国生まれであり、58%はヒスパニック系アメリカ人である。彼らは政治的には民主党支持が
多いのが特徴である。

2 政治に大きな影響を与える宗教団体

 宗教が初めて大統領選挙の大きな焦点になったのは、1959年の大統領選挙である。民主党のジョン・F・ケネディ候補は
カトリック教徒であった。
当時、世論調査では国民の25%はカトリック教徒の大統領に投票しないと答えていた。

 同じ宗教問題が2012年の大統領選挙のテーマとなりそうだ。現在、共和党の大統領候補者で先行しているのがミット・ロムニー
元マサチューセッツ知事であるが、同氏はモルモン教徒である。また、同様に共和党の大統領候補指名を目指す
ジョン・ハンツマン元ユタ州知事もモルモン教徒である。

 アメリカ人の大半はモルモン教をキリスト教の正式な宗派とは見なしていない。その意味では同じキリスト教のプロテスタントか
カトリックかという選択よりも、さらに厳しい選択を迫られることになるだろう。

モルモン教とは

モルモン教として知られる末日聖徒イエス・キリスト教会1830アメリカ合衆国にてジョセフ・スミス・ジュニアによって

創始された。その呼称は
教典のひとつであるモルモン書に由来する。宗教学上はキリスト教の新宗教に分類されている。
一般的なキリスト教との立った差異としては
伝統的な立場にあるカトリックプロテスタント正教会では公式サイトにて一致して異端と表明している。 アメリカ合衆国の宗派別平均所得では、トップである。

6月中旬に行われたギャラップの世論調査では、回答者の22%がモルモン教徒の大統領候補には投票しないと答えている。
党派別で見ると、共和党支持者の18%、無党派の19%、民主党の27%がモルモン教との大統領候補には
投票しないと答えている。

民主党支持者の方がモルモン教に対する抵抗が強いのは興味深い。同じ月に行われたピュー・リサーチの調査では回答者の68%が
モルモン教徒の候補者に投票するのに躊躇すると答え、25%が投票しないと答えている。

こうした調査を受け、ロサンジェルス・タイムズ紙は「モルモン教に対する偏見がアメリカ政治の重要な要素になっている」(621日)と
指摘している。

 アメリカで宗教組織が積極的に政治活動を始めるようになったのが1970年代である。リベラリズムの過剰を懸念した保守派の
プロテスタントがリベラル派批判を始め、社会的道徳の回復を訴えた。

その最初の組織が保守派プロテスタントの「モラル・マジョリティ(道徳的多数派)」で、1980年の大統領選挙でレーガン政権誕生を
資金面で支援した。
モラル・マジョリティの解散後、さらに「クリスチャン・コーリション(キリスト教同盟)」が結成され保守派の
大スポンサーとなる。1990年の大統領選挙で共和党のジョージ・ブッシュ候補を当選させたのはクリスチャン・コーリションの
資金力であったと言われている。

 宗教票が選挙結果を決めたのが2004年の選挙である。ブッシュ大統領とジョン・ケリー民主党大統領候補が争った同選挙では、
イラク戦争と並んで大きな選挙テーマとなったのが同性婚の問題であった

ヒスパニック系アメリカ人は民主党支持者が多いが、同時に彼らはカトリック教徒でもあり、宗教上の理由から同性婚に対して
批判的である。多くのカトリック教徒のヒスパニック系アメリカ人はブッシュ大統領に投票し、ブッシュ大統領の大勝の原動力となった。

 同性婚や中絶、再生細胞の研究など宗教色の強いテーマを巡る論争は“文化戦争”と呼ばれている。オバマ大統領は
就任演説の中で、もう文化戦争を止め、政治の二極化に終止符を打つべきだと主張した。

しかし、こうした宗教的、社会的問題は依然としてアメリカ社会では重要な問題である。現在のところ、2012年の選挙では
経済問題が最大テーマになると予想されている。しかし、共和党候補者は折に触れ民主党に文化戦争を仕掛ける
構えを見せている。

保守派のエバンジェリカルやカトリック教徒を味方に付け最もてっとり早い選挙戦略であることは間違いない。

このような福音主義(原理主義)的終末信仰が、アメリカの対イスラエル政策に巨大な影響を及ぼしているのである。すなわち、
福音主義の立場からは、パレスチナは神がユダヤ人に与えた土地であり、イスラエルの建国は聖書の奇跡の実現であると
捉えられるのである。

そして、彼らはその原理主義的終末観から、ユダヤ人が約束の地イスラエルに帰還するのは、キリスト再臨の前兆で
あるがゆえに、米国政府はイスラエルを支持し、異教徒(イスラム教徒)を聖地から追放すべきであると信じているのである。

このような終末思想に基づき、世界各地のユダヤ人をイスラエルに移住させるための資金援助を行なったり、
イスラエル支援に専門的に取り組む福音主義者を中心とするクリスチャンの運動をクリスチャン・シオニズムと呼ぶが、
1980年代以降、クリスチャン・シオニズムの影響力が増大している。「モラル・マジョリティ」を結成したジェリー・ファルウェル師も
イスラエルの存続を強調し
、当時のイスラエル政府からジェット機や勲章を受けるほどの信頼あった。

メガチャーチ・巨大教会が政治を動かす

アメリカのWASP(ホワイト、アングロ・サクソン、プロテスタント)を代表する勢力である福音主義派の教会。この20年ほどで全米各地にケーブルテレビ、衛星放送、インターネットなどを活用したテレビ伝道師、スター牧師が続出。信徒数が1万人を軽く超え
礼拝出席者が数千人という超巨大教会がいくつも存在している

先駆けになったのがあのブッシュ親子を熱烈に支持してきた悪名高い宗教原理主義者、ビリー・グラハム牧師であるが、その息子、フランクリン・グラハム、あるいは他国元首の暗殺を推奨するパット・ロバートソン、政教一致の提唱者、ジョン・ヘギー、
最近立場を少し変えたジョエル・ハンターら多くが非常に保守的な立場をとる(とってきた)原理主義者である。
このメガチャーチは巨大な政治勢力となり、政治家たちはその声を無視できない。多くの戦争についての是非、増税や社会福祉、。銃規制、進化論教育の禁止、妊娠中絶手術の是非、同性愛の許容など、現実の政策の多くに鮮明な共和党色を出す。


 原理主義キリスト教徒は全米で少なくとも25%、6000万人を超える大集団になった。その中心を担う多くのメガチャーチは、
ある意味でアメリカ福音主義派の宗教原理主義の実態を典型的に表す標本のような存在であった。

 

近時、その内容がブッシュJr.政権の凋落と合わせて少しずつであるが変化してきたようであるが、しかし、実際は依然として非常に
堅固な右派共和党支持基盤である。

 メガチャーチの礼拝はまるで人気歌手のポップスコンサートのよう。静かで落ち着いた静謐な精神的空間とはまるで形容し得ない。

お山の大将的なカリスマリーダーシップを持った牧師が陶酔的演説(時に礼拝の説教というに相応しくない場合もある)を行って
信徒の心を惹きつける。

 

NHKのクローズアップ現代で「巨大教会が政治を動かす」という特集を組んでいた。メガチャーチとは、礼拝出席者
2,000人以上の教会を指しています。

1960年には16か所でしたが、2000年以降は600に膨れ上がり、現在アメリカ全土で、すでに1,300もの
メガチャーチが存在しています。

その数は増え続けていて、ひとつの町にメガチャーチがあると、周辺の教会メンバーは吸い取られる
ようにメガチャーチに流れていき、小さい教会は消えていってしまうのだそうです。

代表的なメガチャーチは、アメリカ最大級、テキサス州のレイクウッド教会(メンバー4万7千人)、
イリノイ州のウィロークリーク教会(2万4千人)、南カリフォルニア州のサドルバック教会
(2万2千人)などです

人数が多すぎて一度に礼拝をすることが不可能なので、ほとんどの教会は土、日の2日間5〜6回に分けて礼拝をしています。

ロバート・シューラー(南カリフォルニアにある、クリスタル大聖堂、キリスト教会の牧師)という名前が多く出てきますが、
メガチャーチのことを理解するのに、彼がキーパーソンになるからです。

彼こそメガチャーチの生みの親ともいえる人物であり、ロバート・シューラーInstitute(神学訓練機関
のようなもの)を持ち、そこを卒業した牧師たちが(全員ではありませんが)、各地でメガチャーチを運営、
指導しているのです。そしてアメリカ全土のみならず、世界中の教会指導者たちが、メガチャーチで
行われているトレーニングセミナーで彼らの方法を学ぼうと集まってくるのです。

フリーメイソン(秘密結社)の最高階級に属している、宗教界のオカルト者―ロバート・シューラー、
ビリー・グラハム、ノーマン・ビンセント・ピール
(彼らは親しい友人同士であり、プロテスタント界の
リーダー的存在です。

メガ チャーチ信者の特性

1.  若い
メガチャーチの信者は
45歳未満が62%を占める。教会全体平均の35%と比べると、いかにメガチャーチが若年層に
浸透しているのかが分かる。

2.  独身多め
年齢が若いこともあって、メガチャーチ信者の
31%が独身。全体平均は10%。だから、メガチャーチは「出会い」の
場所でもあったりする(んだと思う)。むしろ独身者にとっては信仰なんかよりもそんな出会いの方が大事だったりして?

3.  学歴・収入高め
最も注目すべきは、収入の高さではないだろうか。メガチャーチ信者の26%が、$100,000(約930万円)以上。全体平均は15%
全体平均には既にリタイアしている高齢者が多く含まれているとはいえ、大学生や卒業したばかりの若年層を多く抱える
メガチャーチ信者の平均収入は高いように感じられる。これも一つのマーケティング成果なのだろう。

メガチャーチ信者が特に増加しているのは、アメリカの「郊外」なのである。もっと言えば、その郊外の中の「新興住宅街」
「ニュータウン」
なのである。